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パリからの手紙

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ファーを着るなら
皆さま、お元気ですか。
長い冬が開け、桜の春になり、これから夏へ向けてワクワクする季節の到来ですが、パリでは既に2010−2011年秋冬コレクションのデフィレ(ファッションショー)が終わったところです。
今年は、シャネルのフェイクファーが素晴らしかったと思うのですが、カール・ラガーフェルドの言う「リアル・フェイク=本物と区別が付かない偽物」、これが今本当に大事なのだと私も思います。日本よりずっと毛皮愛好家の多いヨーロッパ。私が行き来しはじめた20年ほど前は、まだマダムたちはよくコンサートや美術館へ毛皮のコートを着て来ていました。さすがヨーロッパは肉食だからかな?と、とんちんかんに思っていたのを覚えています。
パリの高級地区にあった、私の叔父の経営する日本食レストランには、日本食がそれほど浸透していなかった70〜80年代は、毎晩マダムらがボリュームのある毛皮のコートで現れ、預かりきれないほどだったそうです。
なぜ今、毛皮が減ってきたのか。それは、第一に資源が減ったこと。
現在は地球に人がどんどん増え、動物が自然に生きられる場所や、大量に飼育できる場所の確保が難しくなり、様々な動物を保護しなければならない状況にあります。
第二に、毛皮が作られる行程での動物の実態が明らかにされたこと。16区に財団を置くブリジット・バルドーが動物愛護家として、随分パリのマダム界の様子を変えたと思います。
第三に、ひと目でそれが金目のものと分かる装いは、白い目で見られるようになったこと。ミンクとクロコダイルのバッグなどという判り易いものはなくなり、ごつい宝石はフェイクジュエリーに取って代わられ、セレブたちは外見の装いから、一般人と距離を感じさせるようなことをしなくなり、格差の少ない社会になり、コミュニズム化されてきました。総毛皮のコートは消え、見かけるのはほんの縁取り程度で、それも今、完全フェイクに移行しています。
“Sense de la qualité =良質”の意味を知る者は、偽物を身につけることに抵抗があるかもしれません。しかも、毛皮の魅力を知ってしまったものは、その暖かさや、自然界のものの美しさに魅了されています。そこで技術を持ってして再現する。シャネルのショーでは、氷河が溶け出し、水の中をジャブジャブ歩くマヌカンの姿が、フェイクだから平気、と強気な表情でした。しかし、この地球温暖化を思わせる演出にはぞっとさせられるものがあり、人間が自然や動物たちと調和して生きる大切さを訴えた、単なるファッション提案を超えた本当に“ブラヴォー・カール!”なショーでした。

木野 真美 Mami Kino

1971年生まれ。ピアニスト。モーツァルトコンクール、日本室内学コンクール、東京都知事賞受賞。
1994年渡仏。パリ16区在住。現在、パリの音楽学校でピアノを教える傍ら、ヨーロッパの音楽祭や古城でのディナーコンサート等演奏活動を行っている。音楽活動の他に、翻訳や日仏交流イヴェント等にも携わる。プライベートでは、日本人の夫との間に息子がひとりいる。

CDリリース:日本人作曲家シリーズCD『伊福部昭』、『貴志康一』、子守歌集『ララバイ オゥ ララバイ!』
公式サイト:http://www.mamikino.com/
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